私たちは通常、ある分野で経験豊富な人を専門家と考えます。また、同じ分野であれば経験豊富な人が仕事をよりよくこなすと考えます。しかし、この世界には多くの富と名誉を持つ若者がたくさんいます。これらの人々は本当に多くの経験があったから若い年齢で大きな成功を収めることができたのでしょうか？
この質問に答えるために、いくつかの研究結果を確認してみましょう。
The Validity and Utility of Selection Methods in Personnel Psychology研究結果によると、仕事の成果との相関が高い人を採用することが無作為に採用するよりも年間150億ドル以上の生産性向上を得ることができ、仕事の成果との相関が低い人々を採用すると無作為に採用するよりも1年に50億ドル以上の生産性向上が可能だと言います。つまり、仕事の成果との相関が高い人が仕事をよくこなす人だと言えます。
この研究で言及されているいくつかの仕事の成果との相関性項目を見てみましょう。
- 高い相関性
- 作業サンプルテスト: 0.54
- IQなどの知能テスト: 0.51
- すべての候補者に仕事の分析をもとに同じ順序と同じ質問をする構造化された面接: 0.51
- 誠実性などの性格テスト: 0.31 ~ 0.41
- 低い相関性
- 経験、年数: 0.18
- 学歴: 0.10
- 興味、趣味: 0.10
相関性(1 ~ -1)で0.2以下は低い相関性で、2つの間に関係がないことを意味します。つまり、経験や学歴、その人の趣味生活は仕事の成果と関係がないと言えます。ここで経験は仕事の成果と完全に関連がないわけではありませんでした。経験が少ない数年間は経験の相関がかなり高かったです。しかし、この範囲を超えると経験の相関は大幅に低くなりました。大学を卒業したばかりの人と2年目のプログラマーの間では、2年目のプログラマーの方が実力が高い可能性が高いです。しかし、5年目と10年目の経験の違いは実力を判断するのに大きな意味がないと見なすことができます。
もう一つの研究結果を確認してみましょう。
Expertise in software design研究結果では、経験豊富な人と経験が浅い人を比較したところ、経験豊富な人が問題を理解するのにより多くの時間と労力を注いだと言います。この研究結果が発表された当時には経験豊富な人を専門家と見なしていたため、この研究結果をもとに多くの分野や企業で要件分析により多くの時間を費やすべきだという根拠として使用されました。
しかし最近の研究では、統計的に有意ではないが実力が優れた人が実力が普通の人と比較して問題を理解するのに時間を少なく使ってることが分かりました。
私が所属する開発者分野はどうでしょうか？ Peopleware: Productive Projects and Teamsでは、最高の開発者が最悪の開発者よりも10倍程度優れた業務能力があり、中間以上の業務能力を持つ人々がそうでない人々よりも2倍優れた業務成果を上げたと言います。経験が10年の開発者が経験が2年の開発者よりも優れていなかった。しかし、新しい言語を学んだ6ヶ月未満の開発者たちは業務成果が低かったと言います。
この本では経験の量的な面ではなく、質的な面が重要だと言います。開発者の経験がどれだけ幅広く多様であるかが実際の業務成果と関連が深いと言います。
これらの内容を踏まえて私たちは経験が業務成果とは無関係であることを知ることができます。もう少し正確に言えば、最低限の経験を超えると経験は業務成果とは大きく関連がないと言えます。経験はその人の能力を代弁してくれず、単にその人が初級かどうかだけを区別するのに使うことができます。
経験をあまり信じると実力はないが経験が高い人が大した人だと誤って判断することがあり、経験で採用の可否や給与水準を決定することは会社に大きな損害を与える可能性があります。経験の代わりに構造化された面接、作業サンプルテスト、試験外注などで採用することが良いですし、実際に一緒に働く人々を採用プロセスに参加させることが良いです。
私たちは経験と実力を同一視する誤った認識に陥っています。この認識を脱し、実力を検証する他の方法について考える必要があります。また、私自身も経験が積まれば実力が積まれるという考えから脱し、着実に実力を向上させる努力をしなければなりません。
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